政治の眼目は日程づくり~米朝首脳合意を吹き飛ばしたトランプ氏元側近“爆弾証言”のタイミングは偶然ではない

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  • 順調な1日目と決裂の2日目を分けたのは爆弾証言
  • 下院民主党は首脳会談日程に議会証言をぶつけてきた
  • 大統領には爆弾証言一色の状況を一変させる必要が

順調な1日目と決裂の2日目を分けたのは爆弾証言

ハノイで開かれたトランプ大統領と金正恩委員長の首脳会談は、まさかの決裂に終わった。初日の2月27日は順調に見え、28日には合意文書の署名式が予定されていたのに『合意に至らず』だった。

なぜなのか?
一体、27日と28日の間に何があったのかを検証し、そこに理由があると考えるのが常道だろう。

となればトランプ氏の元顧問弁護士で『フィクサー』すなわち『後始末役』と呼ばれたマイケル・コーエン弁護士(被告)の議会証言をおいてない。トランプ大統領が1日目の夕食会を終えて宿舎に戻ってから間もなく、議会下院の監視・政府改革委員会で宣誓証言し、トランプ氏のロシア疑惑への関わりや、不倫相手への口止め料を選挙資金から流用したことなどについて暴露発言をした。アメリカのメディアはこぞってトップニュース扱いで、トランプ・金正恩会談のニュースは霞んでしまっていた。大統領はハノイの宿舎で証言の生中継を見届け、アメリカにいる顧問弁護士チームと対応を話し合う必要に迫られたはずだ。2日目の1対1会談でトランプ大統領の表情がこわばっていたのも当然だろう。

トランプ大統領の元顧問弁護士・コーエン被告の議会証言

下院民主党は首脳会談日程に議会証言をぶつけてきた

仕掛けたのはペロシ議長率いる下院民主党だ。政治的効果を計算して、米朝首脳会談を直撃する27日に公聴会の日程をセットした。トランプ大統領にハノイでの会見で「公聴会のタイミングはひどい」と言わしめた日程づくりだ。

もともとコーエン氏の監視・政府改革委員会での公聴会は2月7日に予定されていた。ところが、2月5日の一般教書演説の中でトランプ大統領は、27、28日にベトナムで米朝首脳会談を行うと発表。それを受ける形で7日の公聴会は当日になって延期された。そして2月20日、コーエン氏の公聴会を27日に行うと発表された経緯がある。公聴会の日程は、下院の過半数を押さえる民主党の委員長の一存で決まると言っていい。そこに政治的計算が大いに働く。大統領が外交に逃げるのは許さない。外交でポイントを上げるのも許さないという厳しい姿勢だ。

ロシア疑惑は2020年のトランプ大統領の再選にとって最大の障害といえる。と同時に、ムラー特別検察官の捜査報告書で大統領の命運を決するレベルの事実が明らかにされない限り、ロシア疑惑は明確な勝者も敗者もなく、その時々に大統領あるいは民主党が得点したり失点したりする政治ゲームになる。今回の公聴会のタイミング、そして米朝首脳会談の『決裂』はまさにそういうゲームの一環として理解できる。

大統領には爆弾証言一色の状況を一変させる必要が

大統領にとってアメリカ国内がロシア疑惑、コーエン爆弾証言一色になっている状況は非常に具合が悪い。すぐにでも状況を一変させたい。ハノイの地でそれができるとしたら、事前の予想をはるかに超える『非核化の実現』での合意か、さもなくば『決裂』のどちらかだろう。大統領が試しに具体的な非核化を強く要求したら、金委員長は大統領が飲める訳もない完全な制裁解除の要求を返す。その結果が『決裂』であっても、トランプ大統領としては構わない。今はコーエン氏の爆弾証言を吹き飛ばす威力が大事だからだ。

いずれ金委員長との会談は再開できる。だから金委員長を悪く言ったりしない。おそらく北朝鮮側もトランプ大統領を名指しで批判することはないだろう。金委員長はそれだけ深くドナルド・トランプの人物像とトランプの流儀、そしてアメリカの政治状況を研究している。

これが民主党が仕掛けた首脳会談の最中に議会証言という企てに対するトランプ流の応手だ。やられたらそれ以上の強烈さでやり返す。トランプ流恐るべしだ。

ベトナムから帰国の途につくトランプ大統領

【執筆:フジテレビ 解説委員 風間晋】

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