トランプの“壁際”に追い込まれた大統領の次の一手は?

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  • 議会妥協案を突っぱねる?期限は目前に
  • トランプ流が裏目に出て“壁際”に後退
  • "壁"で妥協せずなら外交日程に影響も

「ハッピーじゃない!」

“トランプの壁”の予算をめぐる政治的駆け引きの期限が2月15日に迫っている。この日までに新たなつなぎ予算が成立しなければ、連邦政府機関の一部がまたしても閉鎖される。議会では共和党と民主党が妥協案で合意しており、トランプ大統領がこれを受け入れさえすれば、政府機関の閉鎖という事態は避けられる。

しかし、大統領はその妥協案に大いに不満だ。大統領が要求する“壁”予算額は57憶ドル。これに対して議会妥協案で認められたのは13.75憶ドル。4分の1にもならない。当然のことながら大統領は「ハッピーじゃない」とコメントし、次の一手をあれこれ検討しているようだ。

「ハッピーじゃない」とコメントするトランプ大統領

大統領は拒否権を行使して議会が可決した予算案を突っぱねることができる。議会は上下両院がそれぞれ3分の2の賛成をもって大統領の拒否権を覆すことができるが、期限の2月15日は目前に迫っている。トランプ大統領が議会妥協案を受け入れると公言しない限り、拒否権を議論するまでもなく、時間切れ→政府機関の閉鎖へと進む。

「非常事態宣言」の可能性は?

大統領は、妥協案を受け入れて政府機関の閉鎖を回避した上で、「非常事態宣言」を行うことも考えられる。政府機関の閉鎖がなければ、「非常事態宣言」への反発は少なくて済むかもしれない。特に与党議員の離反を抑え込める可能性がある。

大統領は各省庁に配分済みの予算の組み換えによって、必要な資金をねん出することも可能だ。現地報道によれば、災害支援や洪水対策あるいは軍人家族住宅の建設費などが対象になり得るという。まだ執行されていない予算をかき集めているという話も聞こえてくる。

もしかしたらこれ以外にもトランプ流のウルトラCがあるのかもしれない。しかし、トランプ大統領が“壁”で窮地に追い込まれていることは明らかだ。去年11月の中間選挙以降、“壁”をめぐる駆け引きは大統領が望む成果につながっていないし、議会共和党は妥協案が現実的なベスト・ディールと判断したからこそ大統領が不満と承知の上で民主党と合意した。共和党はこれ以上“壁”で消耗戦を続けるつもりはない。

“壁”に追い詰められたワケ

壁を視察するトランプ大統領

なぜ、トランプ大統領はそこまで“壁”に追い詰められたのだろうか?

まず、“壁”がとても分かりやすい公約だからだ。その姿はイメージしやすいが、公約が果たされたか果たされていないかも一目瞭然という困った面も併せ持つ。“トランプの壁”は大統領個人の公約であって、共和党や多くの共和党議員の公約ではないという点もトランプ大統領にのしかかる。

次に、“ディールの達人”というトランプ大統領の統治スタイルの機能不全だ。議会は上院100人、下院435人の議員がそれぞれに政治信条や選挙区事情を抱えながら合意を形成するマルチの場だ。個々の議員は大統領同様、有権者から直接選挙で選ばれており、その意味で大統領への引け目はない。特に当選を重ねた委員会の委員長クラスはそうだ。大統領が好むバイの取り引きスタイルが議会相手ではうまく機能しないきらいがある。トランプ減税が成立したのは大統領が議会に丸投げしたからだ。

そして、「最後に決めるのは俺だ」というスタンドプレー好みの弊害。鮮やかな取り引きができれば格好いいが、取り引き不発となれば、その責はトランプ大統領一人が負うことになる。であれば『不発』は何が何でも避けなければならない。かくして合意形成力は著しく減衰する。

2月15日までの限られた時間で、トランプ大統領と政権スタッフが全く新たな“壁”合意を議会との間で形成できるとは考えにくい。となると大統領は、議会妥協案を受け入れるか、それとも強硬策に打って出るか。その理由説明の仕方も含めどちらがよりアピールでき、2020年の再選選挙にプラスになるのか。

大統領の判断次第では、金正恩委員長や習近平国家主席との首脳会談など、今後の外交日程に影響が出てくる可能性も考えておかなくてはならないだろう。

【執筆:フジテレビ 解説委員 風間晋】

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