大阪・堺市あおり運転で殺人罪適用となるか? 決め手は被告のドラレコ「はい終わり~」発言の意図

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  • 追突直後に陽気な声で「はい終わり~」被告は「自分の立場や生活が終わった」と説明
  • 「これから飛躍する大事な時期、邪魔してしまった」声を震わせ遺族に謝罪する場面も
  • 殺人罪適用の可能性「あり得る」弁護士が解説 争点は“殺意”の有無

追突された被害者に対する言葉? 被告は「あえて衝突させてない」と否定

大阪・堺市で昨年7月、前方のバイクに対し乗用車であおり運転をした上、追突して男子大学生を死亡させたとして殺人罪に問われている中村精寛被告(40)。
16日、大阪地裁堺支部で裁判員裁判の第2回公判が行われた。

検察側の冒頭陳述によると、中村被告は自分の車の直前にバイクが入ってきたことから、パッシングをして加速。
バイクは加速して車線変更をしたが、中村被告は時速90キロに加速し同じ車線に移り、約1kmに渡りあおり運転を繰り返したという。

さらに、時速100kmを超える速度で車間距離を詰めた中村被告の車は、ゆるやかにブレーキをかけつつ最終的に時速約96kmでバイクに追突した。
検察側は、「時速100kmを超えるスピードで車間距離を詰めあえて追突した、事故ではなく事件だ」と、殺人罪を強く主張している。

公判で検察側が証拠として提出したのは、中村被告の車に取り付けられたドライブレコーダーの映像。
そこには、追突した後に中村被告が言い放った、ある言葉が残されていた。

ドライブレコーダーに残されていた「はい終わり~」という音声。
検察側は、これを「追突された被害者に対する言葉」と解釈し、過失ではなく故意に事故を起こしたと判断している。 

一方、中村被告は「あえて衝突させてない、腹をたてて追い回していない」と起訴内容を否認。
弁護側も殺人ではなく、自動車運転過失致死の適用を求め、「はい終わり~」という発言の意図については、中村被告は裁判前の記者との面会で「事故をしたら仕事をやめなきゃいけない、“自分の立場や生活が終わった”ということ」で発言したと主張している。

あおり運転を巡る異例の裁判。「直撃LIVEグッディ!」では中継を交え、最新情報を伝えた。

被告の妻が証言「ブレーキを踏むのが遅れる癖があった」

広瀬修一フィールドキャスター:
先ほど、弁護側からの被告人質問の中で、中村被告が遺族に対して声を震わせながら謝罪をするという場面がありました。

その時、中村被告は次のように話した。
「愛情を持って育てていた22歳という、これから飛躍する大事な大事な時期で、邪魔してしまったことに対して深く謝罪する」

広瀬:
これまでは淡々と答えていた中村被告ですが、この時は声を震わせる様子がありました。
そして、証拠品として出たドライブレコーダーの映像ですが、私も何回か見ることができました。
制限速度60kmの道路をかなりのスピードで猛追していて、衝突する直前は時速100km近い速度が出ていましたが、私の目にはほぼ躊躇なく追突していたように見えました。
ただ、衝突の1秒前にブレーキランプは光っていました。追突後は、慌てたり声をあげる様子もなく、ゆっくりゆっくりスピードを落として停止。
そして明るい口調で「はい終わり~」と言っていました。

広瀬:
「なぜブレーキを踏むのが遅かったのか」という質問に対しては、「急ブレーキを踏むことに普段から慣れていない」と。
中村被告は、普段4tトラックを運転していて「急ブレーキを踏むと荷崩れが起きて危険なんだ。だから急ブレーキをする癖が私にはない」というような話をしていました。
検察側は「(普通は)死にもの狂いで踏むでしょう」と、そのあたりの質問を繰り返しています。

安藤優子:
中村被告は、運転に携わる仕事をしているんですね。
これまでこういった危険な運転やあおり運転をしたという事実は出てこなかったんでしょうか。

広瀬:
具体的な事実というものはありませんでした。
運転に関しては、証言台に立った被告の妻が「中村被告の運転はちょっと危ない面があった。ブレーキを踏むのが遅れる癖があった」という話のみでした。
妻の証言は弁護側からの質問なので、あくまで今回の事故は意図して起こしたものではなく、ブレーキを踏むのが遅れてしまった、そんな癖が今回も出てしまったということを主張していきたいんだと思います。

安藤:
「はい終わり~」という言葉が何を意味するのか…
中村被告自身の説明では、「これで自分の人生が終わりという意味だ」と言っているんですが、広瀬さんは陽気な感じだったと言っていましたね。

生稲晃子:
自分の人生が終わった時に、「はい、終わり」ってそんなこと、言わないですよね。
しかも陽気にって…苦し紛れの言い訳にしか聞こえません。

安藤:
「はい、終わり」という言葉は、声のトーンや言ってる状況などによって重要になってくるものでしょうか。

齋藤健博弁護士(虎ノ門法律経済事務所):
もちろんそうですね。「はい、終わり」というのは、結果が出た後に発言しているわけですよね。
そこに至るまでにどういった行為があったのか、その後の「はい、終わり」という言葉がどう意味を持つのかっていうのは、重要になってきます。

「殺人罪」の立証は可能か? 争点は “殺意” の有無

安藤:
今回、衝突する寸前に少しブレーキを踏んでるんですよね。
ブレーキを踏んでいるというのを、殺意はなかったという立証に使われようとしているんですが、(殺意がないなら)なぜそこまで追いかけていったのか疑問に感じます。 

生稲:
しかも時速100kmですよね。もしかしたら、この人の意識でブレーキを踏んだのではないんじゃないかと思うんですよね。
人間って自分の安全も考えますから、気持ちではなく反射的にブレーキを踏んだのがこの96kmになったのかなと私は思ったんですが。

安藤:
確かに、見方によってはそういった捉え方も成立しますね。
ブレーキを踏んだかどうかは、殺意があるなしにどうつながっていくんでしょうか。 

齋藤弁護士:
本的には、殺意がある場合はブレーキを踏むことなく、そのまま、むしろスピードをあげて突っ込んでいくという考え方の方が普通だと思います。
あえてブレーキを踏んでいれば、実は殺すつもりまではなくて、あおってそれがたまたま進行してしまったという主張もあり得るということです。 

安藤:
でも、ぐっと急ブレーキは踏んでないわけですよね。つまり止まる意思はなかったということなんじゃないですか。

齋藤弁護士:
確かにどちらとも考えられます。これから裁判官が判断するところですね。

安藤:
こんなにあおり運転について報じているにも関わらず、私つい最近もひどいあおり運転を見たんです。
齋藤さん、なぜあおり運転そのものを道交法以外で、延長線上に殺意につながるものがあるという形で罰せられないんですか。

齋藤弁護士:
基本的に、刑法上の殺人罪を適用するためには、必ず殺意が必要になってきます。
積極的に殺す意思がないと、刑法上の殺人罪には問えません。(あおり運転は)危険運転致死傷罪までは問えますが、殺意がないと殺人罪は適用できないと法律で定められているんです。

安藤:
法律の拡大解釈はもちろん危険性を伴いますが、あおり運転そのものをもっと厳しく罰するべきだと私は思います。

木下康太郎フィールドキャスター:
斎藤弁護士によると、殺人罪の立証は可能なのか?
はい終わりという言葉に関しては、殺意の判断材料にはなるが、大きな決め手にはならない。
そしてドライブレコーダーの映像・音声に関しては、解析によって速度・走法・車内の物音などが明らかになれば証拠になると。
殺人罪が適用される可能性は総合的に見て、斎藤弁護士は高いと見ているということです。

安藤:
なるほど。殺人罪、適用されますか?

齋藤弁護士:
総合的に判断すると、あり得ると考えています。

(「直撃LIVE!グッディ」1月16日放送分より)

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