中欧を繋ぐ貨物鉄道を「国際公共財」とすべし 「シーパワー」と「ランドパワー」対立の時代へ

吉崎達彦
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  • 一帯一路は「国際公共財」としてなら発展する可能性を秘めている
  • 日本政府の対応は去年から急展開 まさに現在進行形 
  • 対中ビジネス後遺症を克服し 低リスク分野から日本企業の対中協力を

日本は「一帯一路」にどう参加するのか

2年前、当時まだ日本国内の関心も薄かったころ、中国社会科学院主催のシンポジウムで北京に呼ばれたことがある。
筆者に与えられた発表テーマは、「一帯一路と日本の貢献」であった。

「あの~、わが国としてはあんまり貢献するつもりはないんですけど。それに『一帯一路』構想って、日本も含まれているんでしょうか?」
と言いたくなるのをグッとこらえて、格好をつけてこんな発言をしたものである。

「一帯一路が『国際公共財』を提供するものであれば大いに結構である。しかし単純に中国の国益を追求するようなものであれば、うまくはいかないのではないか」

このときに筆者が提出した論文はその後、同研究所の「日本経済青書2016」に掲載されたくらいなので、この意見はあながち的外れではなかったようである。

シルクロード

対中ビジネスの後遺症をどう克服するか

その後、「一帯一路」への中国側の熱意は一時期は冷え込んだようであったが、最近はまた盛り上がりを見せている。
まさに現在進行形である。

2017年6月5日「アジアの未来」晩餐会で安倍首相が「一帯一路の構想は、洋の東西、そしてその間にある多様な地域を結び付けるポテンシャルを持った構想だ」と発言。
安倍政権がこの構想に前向きな姿勢を示したことは驚きを持って受け止められ、中国側も急に対日「微笑み」外交に転じている。

日本国内では、外務・財務・経済産業・国土交通の4省が、いわゆる「一帯一路ガイドライン」を示すなどして、民間企業の背中を押すようなこともしている。

真面目な話、省エネ・環境協力や産業高度化などで日中の企業が協力できるようになるのは悪い話ではあるまい。

その一方で、「インフラ建設案件で、中国の国有企業と共同出資するなんてちょっと怖いよなあ」という気分も残る。

反日デモ、毒ギョーザ事件、レアアース禁輸など、日本企業は中国市場で何度も痛い思いをしてきた。

年率6%で成長する隣国の市場は魅力的ではあるけれども、投資した巨額資金が回収できなくなったりしたら目も当てられない。

リスクの低い分野から日本企業の対中協力を

そんな中で面白い動きは、経済同友会の中国委員会が昨年12月、重慶と成都へミッションを派遣したことである。

この両都市は、一帯一路の「陸のシルクロード」における中核拠点である。
このところ中国と欧州を結ぶクロスボーダー鉄道が急ピッチで発展しており、重慶とドイツ・デュイスブルクの間では今や41両編成の列車が毎日行き来しているとのこと。

鉄道貨物を使うと、海上輸送の3分の1の輸送日数、航空輸送の2分の1のコストで済むというから驚きだ。

実際、国際貨物鉄道「中欧班列」は開通してすでに6年になるが、中国国内の34都市と欧州12カ国34都市を結び、現在までに約6000便の列車が走っているという。

筆者などは商社の禄をはんでウン十年になるが、「貿易=海上輸送」という固定観念ができあがっている。
それが広大なユーラシア大陸の東西を結ぶ鉄道ネットワークが使えるようになったというのなら、これぞまさしく「国際公共財」と呼んでいいのではないか。

つまり日米など現状維持勢力である「シーパワー」に対し、中国を中心とする新興勢力の「ランドパワー」が挑戦しているように見えてくるのだ。

既に日本通運では、この春から欧州向け貨物の一部をこの貨物鉄道ネットワークに切り替える動きがあると聞く。

日本企業の対中協力は、この辺りから始めるのが良いのではないか。
無理をせず、リスクの低い分野から少しずつ、ということである。


【執筆:双日総研チーフ・エコノミスト吉崎達彦】


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