「防災×テクノロジー」激甚化する災害にITで立ち向かう省庁縦割り打破で新たな取り組み

カテゴリ:テクノロジー

  • 部局横断で新たな「タスクフォース」を立ち上げ
  • これまでの防災対策にITを活用した事例は…
  • SNS、AI、シェアリングエコノミー今後の議論と課題

部局横断の『防災×テクノロジー』タスクフォース

政府はこのたび、去年、台風15号や19号などの大型災害に見舞われた経験を生かし、防災に最新テクノロジーを活用するための新たな作業部会を立ち上げた。

第1回タスクフォース・2月18日

内閣府に新たに設けられた「『防災×テクノロジー』タスクフォース」には、内閣府の防災部局に加え、科学技術、宇宙政策、ITをそれぞれ担当する部局や関係省庁、さらには大学や民間企業、自治体なども参加する。政府の防災対応は、国土交通省出身者で多くが構成される内閣府の防災部局が中心となって行うが、今回は部局の壁を越え、最新技術も取り入れて対応を効率化する狙いがある。

平副大臣会見・2月13日

タスクフォースを束ねる内閣府の平副大臣は会見で「激甚化する災害に対応するため、ICT(情報通信技術)など新たなテクノロジーの活用が重要だ」と強調した上で、「防災政策は武田大臣、IT政策は竹本大臣とラインがわかれているが、どちらも副大臣は私なので連携融合を図りたい」と意気込みを語った。

これまでの「防災×テクノロジー」の好事例

政府はこれまでも、災害対応の現場でITを活用してきた。政府の災害対応というと、避難所の設置や道路の啓開など、いわゆるハード面での対応が注目されることが多いが、最近注目されている「防災×テクノロジー」の好事例を2つ紹介したい。

2019年の台風15号でゴルフ練習場の鉄柱が倒壊(千葉・市原市)

1)災害情報共有システム「SIP4D」
SIP4Dとは、避難所情報や道路の通行規制情報など、複数ソースからの多面的な情報をデジタル地図に重ね合わせ集約するシステムで、内閣府の科学技術を担当する部局が運用している。様々な情報が刻一刻と変わる中、紙の地図に代わって現場から重宝されている。

(平成30年度防災白書より)

2)LINE「防災チャットボット」
LINEの「チャットボット」は、友達登録すると自動的に情報のやりとりが行えるシステムで、企業の公式アカウントに活用されることが多い。この機能を使い、下記のイメージのように、国や地方公共団体から避難情報をピンポイントで通知したり、逆に被災者から災害情報の吸い上げを行ったりする試みが行われており、実際に昨年の台風15号、19号の現場でも運用された。発災当初は電話が通じにくかったり、自治体職員が対応に追われ情報の収集が十分に出来なかったりすることが多いため、防災現場ではLINEの活用に注目が集まっている

(防災科学技術研究所資料よりイメージ)
2019年の台風19号による河川の氾濫

「防災×○○」で議論を展開

『防災×テクノロジー』タスクフォースでは、こうした先行事例を踏まえ、4~5のテーマを取り上げながら議論を進め、施策を6月の骨太方針(経済財政運営と改革の基本方針)に盛り込むことを目標とする。そのうえで、2021年度予算の概算要求に反映させ、施策を実行に移すという流れだ。これまでに、2回会合が行われている。

第1回タスクフォース・2月18日

第1回の会合では、前述したようなAIチャットボットの活用をテーマに、地方自治体やLINE社からヒアリングを行った。議論の過程では、AIと防災に関する協議会に、内閣府の防災部局が参加していなかったことが判明するなど、「防災×テクノロジー」をめぐる政府内の体制に関する問題点も浮かび上がった。副大臣はその場で防災部局に参加を指示した訳だが、タスクフォースにはこのように政府内の課題を洗い出し改善するという意味合いもあるだろう。

第2回タスクフォース 3月17日

第2回のタスクフォースでは、三重県の鈴木知事を招き、SNSやAI技術等を活用した地方自治体の先進的な取り組みについて意見交換が行われた。鈴木知事からは、「屋外の防災無線が聞こえにくい」「ピンポイントの避難誘導を行いたい」といったニーズに応える、AIスピーカーを使った避難の呼びかけなど、先進的な取り組みが紹介された。一方で、特に地方への財政支援という面において、現行の法制度では先進技術に必ずしも対応出来ていないという課題が指摘された。

今後は、以下のようなテーマでの議論が想定されている。
「防災×シェアリングエコノミー」大規模災害時に公的施設での受け入れに限界があることから、“防災民泊”のような取り組みを検討。
「防災×宇宙」衛星を使って浸水・被災エリアを特定し、その地域に住んでいれば罹災が証明される仕組みなど、罹災証明書発給の簡便化を検討。

第2回タスクフォース 3月17日

今後の課題は

領域横断的で最新技術を取り入れたタスクフォースだが、先進的な取り組みゆえのハードルもあるだろう。長期的見通しから議論を進めるというが、具体的な成果が見えるまで時間がかかること、さらに、複数の部局を横断する取り組みにつき、部局間の連携が難しいことが課題として挙げられるだろう。

同じ内閣府という役所の中でも、防災部局は国土交通省からの出向者が多く、一方で科学技術の部局は文部科学省からの出向者が多いということで、関係者は「風土が全く異なる」という。だが実際に災害が起きた場合は、省庁の縦割りを語る余裕などないだろう。今回のタスクフォースを契機に、成果が見える形で議論を進め、縦割りを乗り越えることができるか、平副大臣の手腕に注目したい。

(フジテレビ政治部 首相官邸担当 山田勇)