終結したテコンドー狂騒曲「残された課題」とは…

  • テコンドー日本代表、男女各2階級4人が決定
  • 4選手共通の思いは「五輪で結果を出す」こと
  • 代表コーチ不在の影響、新強化委員長は対応できるか

テコンドー日本代表、男女各2階級4人が決定

強化方針の対立から、内部で混乱が続いていた全日本テコンドー協会。
連日テレビや紙面で内紛劇が扱われたなか、2月9日に行われた東京五輪日本代表最終選考会(場所:岐阜県羽島市立桑原学園体育館)で、開催国枠のある男女各2階級の代表選手が決まった。

男子58キロ級代表の鈴木セルヒオ

男子58キロ級の鈴木セルヒオは、2019年4月に右肩をケガし手術。
実戦的な練習を始めたのは11月頃といい、今回の最終選考会がぶっつけ本番だった。
「出場選手がわかっていたので対策を練ってきた。試合の面白みはなかったかもしれない」と苦笑いを見せたが、もともと戦略を組み、読みとタイミングを見てカウンターを合わせるタイプ。準備を整え、リオ五輪の予選で届かなかった代表の座をつかんだ。

2019年4月に手術し“ぶっつけ本番”もうまく対応した鈴木セルヒオ

その鈴木セルヒオが「僕より才能がある、身体能力が高く、鈴木家の中でも怪獣のような扱い」と評するのが、弟の鈴木リカルド。ボリビア生まれの19歳は、兄の背中を追い2年前に来日。

男子68キロ級代表の鈴木リカルド

兄の母校でありテコンドーの名門、大東文化大学に進学すると、たぐいまれな身体能力で頭角を現し、同じく大東文化大学出身の女子49キロ級、山田美諭とともに代表選考レースを制し、笑顔を見せた。

女子49キロ級代表の山田美諭

対照的に、「ふがいない、負けたような感じがする」と悔しさをのぞかせたのは女子57キロ級の濱田真由。決勝で思うような試合ができなかったが、それでも五輪2大会連続出場の意地を見せた。

女子57キロ級代表の濱田真由

試合終了後の会見で思い思いに五輪への気持ちを語った4人。
しかし会場の空気が変わったのは、協会の騒動について尋ねる質問が出たときだった。

4選手共通の思いは「五輪で結果を出す」こと

協会の強化指定選手が合宿費用を自己負担するなど、選手側が協会やナショナルコーチへの不信感を表明したことに端を発した騒動。

2019年10月1日、選手側と協会側との話し合いが行われ、決裂したのを契機として対立が激化。選手側と対立関係にあり、独特な風貌と苛烈な言動で注目を集めた金原昇会長(当時)が次第にテコンドーの話題の中心となり、選手の思いは置き去りにされた。
さらに、連日の報道情報番組の扱いに辟易している人も多かったはずだ。

「テコンドーの価値が下がるのではと言う不安があった(鈴木セルヒオ)」
「問題が起きたとき何もできなかった。もっと大人にならないといけない(濱田)」

それぞれ当時の不安を口にする中、代表4人に共通していた思いは「選手がやるべきことは勝つこと」「結果を出して、テコンドーを世間に認めてもらうこと」という強い決意だった。

金原昇テコンドー協会前会長も登場。観客席から視線を送った

一連の騒動で良くない意味で知名度が上がり、スポンサーも撤退。
最終的には金原氏ら当時の理事が全員辞任する形で収束に向かい、12月には日本卓球協会名誉副会長の木村興治新会長ら新体制のもとでの船出となったが、いまだナショナルコーチの人選が決まらないなど、問題は山積している。

その状況下、東京五輪で「結果を残す」ことがどれだけ重要か。一番わかっているのは選手たちだった。

代表コーチ不在の影響、新強化委員長は対応できるか

2020年2月3日に強化委員長に就任した山下博行氏は、最終選考会終了後会見を行い「限られた時間の中で、選手の力を引き出していきたい」。
前体制で顕在化したナショナルコーチ陣と所属先のコーチとの対立を改め、連携を密に取る方針を明らかにした。

強化委員長就任の山下博行氏。選手強化の改革を進められるか

しかし選手が昨年、何度も訴えてきた「自分たちの所属コーチを帯同させてほしい」という点は未だ不透明だ。

リオ五輪アジア大陸予選でコーチを務めた山下氏は選手からの信頼も厚く、テコンドー経験者のいない理事ら協会幹部にどこまで「帯同するコーチの重要性」を伝えられるか、新しいナショナルコーチと所属先コーチとの折衝を行えるかが今後の焦点となる。

金原体制で問題視された組織の透明化、財政健全化の第一歩は踏み出したが、肝心の選手強化はここからのスタートだ。
代表4選手から五輪への決意を色紙にしたためてもらった。

「世界一!!に俺はなる!(鈴木セルヒオ)」
「兄と金メダル(鈴木リカルド)」
「金(山田美諭)」
「自分の頑張り次第(濱田真由)」

代表選手4人が色紙に書いた五輪への決意

選手たちの決意に協会はどう応えるのか。
そして、我々報道する側も「金原劇場」が沈静化した今だからこそ、 改めて選手ファーストを肝に銘じ冷静に報道する必要があると思っている。

(フジテレビ報道局報道スポーツ部 川崎健太郎)