魚の内臓が漂う国後島 北方四島の共同経済活動はゴミ対策から

カテゴリ:ワールド

  • 経済活動5項目は観光、水産養殖、農作物ハウス栽培、風力発電、ごみの省量化
  • 国後島では、魚の内臓やあらが海面に浮遊して悪臭が漂っていた
  • 色丹島ではゴミの焼却施設がない・・・果たしてどうする?

5項目の共同経済活動

ペルシャ湾における軍事的緊張、米国と中国の間で続く経済戦争、再び緊張感を増してきた北朝鮮問題、世界の各地で噴出する安全保障に係る問題の煽りを受け、日本とロシアの間の平和条約交渉も停滞し、北方領土問題も解決の糸口を見失いかけている。その一縷の望みが、北方四島における共同経済活動である。

共同経済活動とは、北方四島の行政府および同島に暮らすロシア系住民と日本政府および民間組織が、地域的な経済協力を進め、新たな北方領土返還交渉の姿を模索しようとするものである。具体的なプランとしては、観光、水産養殖、農作物のハウス栽培、風力発電、ごみの省量化の五項目が挙げられている。

増産に追いつかない汚水対策

その中で、第一弾として両国政府は、国後島におけるごみの省量化に取り組む。何処も同じようにごみの問題は、地域住民の最大の関心事である。

8月19日の正午、15日に根室港を出発し国後島に向かっていた北方四島交流事業(ビザ無し交流)の一行が、一連の訪問事業を終え根室港に帰還した。一行が乗っていた北方四島交流事業専門船「えとぴりか」には、二人のロシア人の男女が乗船していた。この二人は、国後島においてごみ処理事業を行う担当者である。二人は、サハリンから空路、訪日するサハリン州の担当者とともに、根室市においてごみ処理事業の視察、研修を行う予定だ。

筆者は、この8月15日に出発したビザ無し交流に参加し国後島、色丹島を訪れた。両島ともに三年ぶりの訪問である。

国後島の港に着くと最初に私たちを迎えたのは、吐き気がするほどの強烈な異臭である。その匂いは、港の海面から湧き上がっていた。海面を覗き込むと魚の内臓らしきものやあらが、あたり一面に漂っていた。港に隣接する水産加工場が海に垂れ流した廃物である。急激な増産に廃物および汚水対策が追いついていないのである。

海面に漂る廃物

また、急速に人口が集中した国後島の中心・古釜布では、下水の整備が追い付かない状況だ。国後島では、島内各域に分散していた住民を古釜布に移住させている。さらに積極的に新規住民の受け入れているため、アパートの建設ラッシュであり、下水処理施設の敷設は、早急な課題である。さらに、国後島では若年人口が増加傾向にあり、家庭から排出されるごみの量が増えているが、焼却施設の規模が小さく、ごみの処理に頭を痛めている。

ゴミ焼却施設がない色丹島

次に訪問した色丹島には、ごみの焼却施設がない。各家庭で燃やして埋めるか、ごみ捨て場に持ち込み野焼きしているのである。島の沿岸部の丘陵地にあるゴミ捨て場は、100メートル四方ほどのごみの山となり、白い煙が立ち上がっていた。また、野焼きでは害獣、害虫の繁殖など衛生面における問題が大きい。島では、ごみ焼却場の建設計画があるものの、まったく建築工事を行う様子はないようだ。

色丹島の穴間港

国後島、色丹島ともに、島内で消費されるものの多くは、サハリンやウラジオストクからペットボトルやプラスチック容器に詰められて海を越え船で運ばれてくる。ごみは増える一方である。さらに問題なのは、島のごみは、海風に当たっているために塩分を付着している。塩分を含んだごみを焼却する場合、高燃度で焼却しないとダイオキシンを発生させる恐れがある。十分なごみ処理施設を持たないことは、重大な環境汚染につながりかねないのだ。

漂流ゴミの処理が課題

国後島の古釜港

国後島は、知床半島と根室半島に挟まれるように存在していることから、漂流、漂着ゴミの処理が懸案となっている。かつてビザなし交流において、国後島の漂着ごみを日本とロシアの人々が協力して回収したことがある。漂着ごみの中には、日本語が書かれたものもいくつか含まれていた。環境保全は、国境を越えた人類共通のテーマである。この環境保全の象徴であるごみ処理問題を日ロ共同経済活動の契機にしようというのだ。

近年、国後島においてもようやく燃えるゴミと燃えないゴミの分別が始まった。日本の行政機関が取り組んでいるごみ処理システムを学ぶことは、北方四島の生活の向上に結び付き、日本の社会、文化の理解に結び着くことだろう。ひいては、北方四島が返還された時、ごみ処理問題を持ち込まないように事前に手を打つことになる。

ロシア側が根室におきてごみ処理研修を行った後は、日本人の専門家が北方四島を訪問してごみ処理、ごみの省量化のアドバイスを行う予定である。

少しづつではあるが、共同経済活動が進み、北方領土返還に結び付くことを望む。

【執筆:海洋経済学者 山田吉彦】

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