人間が装着する「ロボットしっぽ」を開発中…一体何のため?慶応大の開発者に聞いた

  • 慶應大学大学院の研究チームがロボット尻尾を開発
  • 装着すると身体のバランスをとる能力を拡張してくれる
  • 前に屈むと後方に尻尾が上がる

人間が装着する尻尾がTwitterで話題

人間は進化の過程で尻尾を失ったと言われている。
本来、人間には尻尾は必要ないはずだが、人間が装着する「ロボット尻尾」の開発が進んでいるという。

開発しているのは、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科の鍋島純一さんを中心とした研究チーム。

ロボット尻尾は「Arque(アーク)」という名前で、“脊椎動物の尻尾を模倣したウェアラブルロボットテールデバイス”なのだという。

研究自体は今年6月に発表されたのだが、8月にTwitterで画像や動画が拡散し、話題になっている。

こちらが、その「Arque」の動画だ。

結構大きめの尻尾だが、そもそも人間には必要がないはずなのに、一体、何のために開発したのか?
「Arque」の開発者で慶應義塾大学大学院・修士2年の鍋島純一さんに聞いた。

身体のバランスをとる尻尾型のデバイス

――そもそも、この尻尾は何?

平衡能力(身体のバランスをとる能力)を拡張する、尻尾型のデバイスです。


――作ろうと思ったきっかけは?

元々、身体拡張の分野の研究室で研究をしていまして、動物の尻尾の役割に着目し、「尻尾が身体のバランスをとるためにある」という研究のアプローチを考えました。

動物学的に尻尾の役割として、よく言われるのは「感情表現」なのですが、身体のバランスをとるためという論文もあるんです。

身体のバランスをとるために尻尾を使っているとされるのはオナガザル。
重い石を運ぶとき、尻尾を振り子のように振って、身体のバランスをとっているという論文がNatureに掲載されています。

オナガザル科サバンナモンキー

前に屈むと後方に尻尾が上がる

――どういう仕組みで尻尾が動いている?

尻尾には空気圧式の人工筋肉アクチュエータが4軸に沿って埋め込まれており、エアコンプレッサーで駆動させることで任意の方向への制御が可能になります。

そして、ユーザの背中に取り付けられたセンサーで重心位置の変化を推定、重心が傾いた方向と逆方向に尻尾を作動させることでユーザの重心を中心に戻すようサポートします。

具体的には、前に屈むと後方に尻尾が上がり、横に傾くと逆方向に尻尾が上がります。

――どうやって装着する?

ハーネスを背負って、胴体に装着するのですが、それほど難しくはありません。

高齢者や高所作業をする人の使用を想定

――どういった方が使うことを想定している?

高齢者や高所作業をする方が使うことを想定しています。


――人間は進化の過程で尻尾を失ったと言われている。人間も尻尾があった方がバランスをとりやすいということ?

人間は、足場の悪い環境だったり、老化が進むにつれ、平衡感覚が弱まるとされています。

こういう方が使うことを前提として、尻尾が日常生活でも使えるようなクオリティで動くようになれば、尻尾がないよりも、あった方がバランスはとりやすくなると考えています。


――この研究を今後、どのようなことに活用したいと考えている?

今は、高齢者が日常生活でどのようなかたちで使えるかを考えています。


――今後の課題は?

1つは、動ける距離です。
この尻尾には、空気を送り出すシステムが必要なので、装着したまま動ける距離に限界があります。
どこでも使えるようにするために、空気を送り出すシステムを改良する必要があります。

もう1つは、尻尾で完全に身体のバランスをコントロールすることです。
現時点では、実際に身体のバランスをコントロールするまでには至っておらず、これを実現するために研究を続けています。


Twitter上で話題になっているロボット尻尾「Arque」。
人間には必要ないものかと思っていたが、高齢者が身体のバランスをとりやすくするための“人工装具”の研究と考えると、これからの時代に需要がありそうで、どんなものが出来上がるか楽しみになってくる。