安全憲章に初めて「命」の文字 飲酒トラブルをゼロに…日本航空の決意と反省

御巣鷹山・墜落事故から34年

カテゴリ:国内

  • アルコール検査しないと燃料が入りません
  • 模範的な操縦士でも飲酒トラブル 医学的フォローを実施
  • 根絶を誓う一方で、13日にまたしても飲酒トラブル発表…

34年前の1985年、8月12日。 東京発、大阪行きの日航機、JAL123便が 群馬県の御巣鷹の尾根に墜落。
安全運航を誓った日本航空。しかし、去年は安全運航を脅かす飲酒トラブルが相次いだ。
日本航空の運行本部・北原宗明 副本部長に新たな対策と決意を聞いた。

アルコール検査しないと燃料が入りません

-去年、英・ロンドンで元副操縦士が多量の飲酒をした上で乗務しようとして逮捕された。飲酒によるトラブルを根絶するための新たな対策は?

日本航空 運航本部・北原宗明副本部長:
ロンドンで元副操縦士が逮捕された事案以降、アルコール問題は安全問題として再認識して様々な対策を講じてまいりました。
ひとつは社員にしっかりと意識改革を進める。仮にアルコールの影響下にある乗員が業務に臨もうとした時も、確実に水際で防止するという体制の構築を進めてきました。具体的には検査機器に関しては確実に吹き込まなければ検査が終了できない新型の導入や、なりすましや、検査漏れが無いよう、第三者の立ち合いを進めました。

新たな体制は、ほぼ出来上がってきましたが、唯一残っていたのは検査する側と第三者の双方が検査をしなかったことを忘れてしまった場合、検査をしていないに関わらず乗務する危険性がありました。そのため、8月1日からは運航乗務員が気象情報や運航関連情報を確認するシステムの改修を行いました。それぞれが検査した値、第三者が確認した証明を入力することで、システムの中に記録が残り、その記録がないと飛行機が出発するにあたり燃料をオーダーできない仕組みに変更しました。確実にアルコール検査をした実績がシステム上無いと、フライトが出発できないことになっています。これでアルコールの影響下にある乗員が搭乗することは100%出来ないような仕組みが出来上がったと思っています。

日本航空 運航本部 北原宗明副本部長

模範的な操縦士でも飲酒トラブル 医学的フォローを実施

-ロンドンでの事案以降も客室乗務員が乗務中にシャンパンを飲むなど飲酒によるトラブルが相次いだ。飲酒トラブルを無くすための対策は効果が出ているのか?

日本航空 運航本部・北原宗明副本部長:
飲酒事案では様々な教育等を実施してまいりました。乗務前の検知事案件数はロンドン事案の前と比べて大幅に減っています。
社員の意識改革は着実に進んでいると認識していますが、発生率が大幅に減っていても、アルコール検知事案は依然として発生しているのは事実です。

今年度に入ってから、このくらいの飲酒なら引っ掛からないはずという根拠のない自己判断から過大な飲酒になった事案がありました。この事案を踏まえて、飲酒禁止の規定では12時間前というだけでなく、飲酒量の上限についても規定しました。

過去のアルコール事案では、ほとんどのケースで、過去に飲酒に関連した大なり小なり何らかの問題がありました。しかし、至近の飲酒事案に関する当事者は模範的な操縦士で、規定の内容も正確に理解していて、なおかつ順守意識も強かったのです。ただ飲み始めると過剰に飲んでしまったケースでした。そういうことを踏まえてアルコール問題特有の難しさを最近は痛感しています。この課題に関しては意識改革と並行して医学的なフォローを加えることで、潜在的にアルコール問題を起こしえるような社員に対して検知事案に繋がらないようなサポートをする環境を作る必要があると考えています。

安全憲章に初めて「命」の文字

-御巣鷹山・墜落事故の遺族からは日本航空が「誠実に対応してくれている」という声がある一方、昨今の飲酒トラブルについては憤りを感じている遺族もいる。どう応えていくか。

日本航空 運航本部・北原宗明副本部長:
安全に影響する不安全事象、これは機材なども踏まえて様々なものがありますが、ことアルコール問題に関しては機材のトラブルではなくて、本人の意識次第で防ぐことが出来る可能性もあります。そういう意味で皆さんの憤りは当然のものと思いますし、私も全く同じ認識です。従いまして斬鬼の念に堪えないと言うしかないと感じています。
御巣鷹山の事故に関しては520名の方の尊い命を奪ってしまい、更に4名の方に重傷を負わせてしまいました。悲惨な事故を起こしてしまい、深くお詫び申し上げます。また亡くなられた方のご冥福をお祈りします。

日本航空では7月から安全憲章を改訂しました。これは一連の飲酒に関わる事案発生を踏まえて、安全の定義の実現、これをより明確化するために行ったものです。その冒頭には「安全とは命を守ることです」とあります。これまでの安全憲章には「命」という言葉が使われておらず、今回、初めて入りました。御巣鷹山や安全啓発センターを訪れると、我々は一度失ってしまったら永遠に取り戻すことができない命の重みを心から感じることが出来ます。一方で日常においては安全運航の堅持、命を守ることに繋がるということは直接意識することはあまり無ったように思います。今回の安全憲章の改定で日々、命というものを意識するようになったと感じています。
毎朝、この安全憲章を唱和するたびに、御巣鷹山や安全啓発センター、展示されている御遺品などを瞼に浮かべながら、業務にのぞむようになりました。御巣鷹山の事故から34年を迎えますが、全社員がこの事故をはじめ、これまで当社が引き起こしてしまった全ての事故で亡くしてしまった一つ一つのかけがえのない命に思いをはせて、二度と悲劇を起こすことがないよう、日々、命を守ることを強く思い、安全堅持に取り組んでいきたいと思っています。

日本航空ホームページより

(安全憲章とは)
安全はJALグループ存立の大前提として、安全に関わる方針をより具体的に示す必要があると考えられ2002年に制定されたもの。
2011年1月に改定。今回2019年7月に再度改定をし、初めて「命」の文字が入った。

「安全・安心」を疎かにすることは、利用者の命を危険にさらすことになり、企業の存続も危うくする。昨年からの飲酒によるトラブルはそれに繋がりかねない重大な過ちだった。
日本航空の担当部署幹部の言葉からは飲酒トラブル根絶への強い危機感を感じた。
そして、赤坂社長も12日、慰霊登山を行い御巣鷹山の尾根で「申し訳ないとの一心で登った。事故の教訓を忘れたと言われるのではないか」「安全への取り組みに終わりはない。常に危機意識を持って取り組んでいく」と飲酒トラブルの根絶を誓っていた。

しかし、きょう13日、またしても飲酒トラブルが発表された。
8月10日、鹿児島発、羽田行きに搭乗予定だった副操縦士から、乗務前の検査で、アルコールが検出。前日の夜に日本酒を買って、飲もうとしたが、会社の規定で飲酒を禁じられていることに気づき、その際は、飲まなかったという。しかし、翌10日、搭乗直前に昼食をとる際、うっかりこの日本酒を飲んだと話しているが、申告している飲酒量と比べて、検出されたアルコールの値が高いという。

トップや部署の幹部が危機感を持っていても、3万人超の日本航空グループ社員、全員は共有できていないのだろう。
「安全とは、命を守ること」安全憲章に負けぬ使命感を全社員が持つことが問われている。

(フジテレビ報道局社会部記者 相澤航太)