LINEに画像を送ると3秒で「文字起こし」!? これで“手間のかかる”仕事が減るかも…実際に試してみた

カテゴリ:地域

  • 画像内文章をLINEを介して文字起こしするアプリを開発
  • 実際に試してみた。その精度は…
  • 長崎県西海市にあるベンチャー企業の担当者が1人で開発

“手間のかかる”仕事に救いの手?

デスクワークで骨の折れる仕事のひとつが、出力された書類やFAX、画像内にある文章のテキスト化である。
A4用紙にビッシリと書かれた文字を目で確かめ、ひたすらキーボードで手打ちしながら、「自動で変換してくれないかなぁ…」とやりきれない思いを抱えたことがある人も多いだろう。

そんな人たちに朗報となりそうなプロジェクトが今にわかに注目を集めている。

長崎県西海市で2017年に創業したベンチャー企業、西海クリエイティブカンパニーは、3日、AIによる自動文字起こしプロジェクト「文字起こし ばりぐっどくん」のアプリサービスを開始した。
本アプリの公式LINEアカウントと友達になった後、文字起こししたい文字が含まれる画像をLINEするだけで、テキストデータとしてすぐ送り返してくれるという手軽な仕組みで、利用料はなんと無料。(2019年7月16日現在)

実際に文字起こしを試してみた

このサービスでまず気になるのは、「文字起こし ばりぐっどくん」の正確性は一体どれほどのものなのだろうか、ということ。あまり誤字脱字が多いとチェックや打ち直しにも時間がかかってしまう。

百聞は一見にしかず、編集部はさっそく文字起こしをやってみることにした。

まず、「ばりぐっどくん」の公式LINEアカウントを見つけ出し、友だちとして追加する。

次に、「ばりぐっどくん」に対して、文字起こしをして欲しい文章の入った画像を送信。
既読が付くやいなや、「ばりぐっどくん」が即座にテキストデータを案内してくれた。
かかる時間は3秒程度だというが、あまりの早さにこちらが戸惑ってしまうほどだ。

「ばりぐっどくん」がテキスト化してくれた文章と、元記事の文章を付き合わせてみたところ、テキスト化された文章は赤の下線部以外、誤ったところはなかった。今回は、スマホで撮った画像で試したことも考えると、かかった時間と比較しても、文字起こしの精度はかなり高いといえる。

(上)FNN.jpプライムオンラインに掲載された記事の一部文章 (下)掲載記事を出力してスマホで撮影し、「文字起こし ばりぐっどくん」で変換したテキスト

さすがに「100%完璧」とはいかなかったが、一から打つのとは雲泥の差だ。

面倒な入力作業を一気に減らしてくれそうな「ばりぐっどくん」だが、なんと開発者はエンジニア経験なしだという。一体どんな仕組みなのか、そして、LINE一本で済んでしまう分、情報漏洩などのセキュリティ面はどうなのかも気にかかる。

開発を手がけた西海クリエイティブカンパニーの宮里賢史さんに詳しい話を聞いた。

エンジニア経験なし、ひとりで開発を担当

ーーまず、開発のきっかけを教えて?

ずっと西海市で地方創生の仕事をしており、「ばりぐっど」というメディアも運営してきました。その媒体のマスコットキャラであるばりぐっどくんを活用して、「人が減っていく社会」の中で幸せな仕組みを構築したい、と考えたことから始まっています。


ーー西海市の地元ではまだ紙文化が残っている?

基本は紙文化です。電話やFAX、メールが主流かと思います。


ーーサービスの仕組みは?

現在は、LINE Developersの提供するMessaging APIをUI(ユーザーインターフェイス)に、 Googleの提供するCloud Vision APIを文章の画像処理AIに採用。マネージドクラウド上のサーバーに組んだプログラムで両者を結合させることにより、稼働させています。

ユーザーから送られた画像を、処理を担うGoogle Cloud Visionに案内。テキストに変換した後、サーバーを経由して、元のユーザーに改めて再送する。

ーー宮里さんにエンジニア経験があったわけではない、と聞いたが?

はい、未経験です。半年間、G’s Academy(エンジニアの養成学校)に通い、勉強をしてから作りました。

ーー宮里さんひとりでずっと開発・保守を?

今週初め(7月8日前後)くらいまでは、すべてひとりでやっておりました。
ユーザーが急拡大してからはG’s Academyの講師、および九州工業大学の学生に遠隔でサポートしてもらっています。西海では私ひとりです。

ーー開発にかかった期間はどのくらい?

先ほどの説明どおり、LINEやGoogleが公開する技術を組み合わせていますので、ゼロから開発はしていないです。こちらが主に手がけているのは、サーバー上に存在している何百行かのプログラムコードとなっています。

既存のサービスも活用した結果、開発期間は1週間くらいですみました。

画像がぼやけている場合は間違えることもある

ーーLINEを介して送る画像の質は文字起こしに影響する?

写っている写真が小さいものについては、拡大したら読めるレベルであれば大丈夫なはずです。ただ、画像がぼやけている場合は間違えることもあると思います。

ーー重要書類などの起こしにも活用できそう?

本プロジェクト自体が他社サービスとも連携しており、弊社だけで全て責任を取れるわけではないので、無回答とさせてください。

ーーLINEを介する際、情報が漏れたりする恐れはない?

個人情報保護の観点もあり、弊社側では、ユーザーが「ばりぐっどくん」に送信した画像やテキストの閲覧と保存ができません。したがって、どんなやりとりがされているか、こちらでは一切分からないのです。連携先については不明ですが、少なくとも弊社で把握できるのは、ユーザー数と男女の割合程度となっています。

ーー企業や各機関、官公庁からの引き合いはどのくらい来ている?

現在、さまざまな業界の皆さまから多種多様の提案をいただいております。
農業商社から「農作物の収穫のオペレーション改善に使えないか」とか、または「翻訳機能と合わせて、観光案内をさせたらどうか」などがそうです。

ーー現時点でのユーザーはどれぐらい?

7月14日の17:00時点では、35000人を超えております。


ーー利用者はもう日本全国に広がっている?

現在は日本全国と、インドやアフリカにも届いていると聞いております


ユーザー数が瞬く間に伸びているように、今回のようなサービスを必要としている人が多いことがわかるが、アプリ開発の目的は、「人口減少に伴う人手不足の課題をAI技術を活用し解決するため」だとしている。その点についても聞いてみた。

“人がいなくても成り立つシステム”を構築したい

ーーでは、手作業の簡略化によるメリット、またはサービス導入で働き方はどう変わっていきそう?

現在の地域の社会システムは、「人が支える社会」というものが前提になっていると思います。いわば、”人数がいるから成り立っているオペレーション”です。ですが、ご存じのとおり、地域ではその仕組みはもう崩壊し始めています。

そうしたことから、「人がいるから成り立つ社会システム」を維持するため、“移住”や“人口増”を目指すのはとてもポジティブでいいのですが、一方で「人がいなくても成り立つ社会システム」を構築することも、地域ではまた大変重要な戦略だと考えております。

「ばりぐっどくん」の試みを通じて、テクノロジーの社会実装がそうした戦略のキーになりうることを考えるきっかけになればとてもうれしいです。

ーー今後取り組みたいことは何?

プロジェクトはまだまだ実験の段階です。
いろいろな人から「『ばりぐっどくん』になにをさせたら、人が減る社会でも幸せに暮らせるか」のアイデアをいただきたいと思っていますし、一緒に作っていけるパートナーも探したいと考えております。

学校に通って一人で開発したことも驚きだった宮里さんだが、その目は、人口減少と労働力不足を本格的に迎えようとしている日本社会のこれからに向けられていた。
「プロジェクトは実験段階」という言葉どおり、ただ生産性向上というだけでなく、AIを使った「人がいなくても成り立つ社会システム」の構築は、今後も必要とされていくのだろう。